「お疲れ〜っす」
「犬飼先輩こんちわーす」
二宮隊作戦室。スタイリッシュな内装のそこに珍しい訪問者が二人。部屋の主である二宮隊の隊員のうちまた二名がそれを出迎えた。犬飼と辻。辻は勉強中のため無言で右手を挙げただけだったので、もっぱら歓待したのは犬飼だった。
「おー槍バカと弾バカじゃん。お疲れ〜」
「二宮さんいます?」
「二宮さんはねえ、もうすぐこっち来ると思うよ。待つ?ジンジャーエールしかないけど」
自分用のミネラルウォーターのペットボトルを傾けながら、二宮以外滅多に開けることのないほぼジンジャーエール専用となっている冷蔵庫のドアに犬飼は指をかけてみる。
「ちょwいいんすか勝手にw」
「いいのいいの」
「駄目ですよ犬飼先輩。コーヒーありますから今出します」
「冗談だってえ〜」
へらへらした犬飼と仏頂面の辻。ボーダーでよく見られるいたって普通の光景だ。ラウンジで見るのとは少し辻の表情が柔らかい気がしても、そんなのは、……気のせいだったらよかったが。見られたくない顔を見られてしまったような顔をして、なげやりに辻は客人二名に要件を聞く。
「何しに来たの、出水。米屋も」
「いや普通に、二宮さんに頼まれてた俺のトリオンとトリガーのデータよ。持ち主本人の許可無しだと色々やりにくいってさ。予定もなかなか合わないし、それだったら俺が調べといてそれを二宮さんに報告すればいいじゃんつって」
「堂々と敵に塩を送らせんのやばいよね二宮さん。協力するお前もお前だけど」
「いやあ、組織的にはみんなで強くなったほうがいいでしょ。二宮さん強くなるとオレも面白くなるし」
「やだ〜荒船みたいなこと言う〜お前もああなっちゃうの?なれないか弾バカだし」
「オレは弾バカだけどバカではないつもりなんですけど!?」
「で、米屋は?」
「え〜おれは暇だったし〜ていうのは半分嘘で〜」
ちらりと米屋が盗み見るのは辻のなんでもない表情だ。
「なんだよ」
「辻、お前向こう行っといた方がいいぞ」
「だから何」
「別によくね?犬飼先輩さあ、迅さんと続いてるって話聞いたんだけど」
「うん」
「まさか本気じゃないですよね?」
「辻というものがありながら!」
「そんなん言ってたらお前らだってワンナイトありまくりじゃん」
「オレんとこは秀次ひとすじですけど♡乱交だって挿入ナシだったし」
「オレはフリーだからいいでしょ!」
「太刀川さんは?」
「……片想いと付き合ってるのは違うでしょ」
「同じだよ〜おれも辻ちゃんのこと好きだもん。ねえ辻ちゃん」
「俺がつれないせいみたいな言い方しないでくれますか……」
「ちょろすぎるわやっぱこの子」
「ダメだわこれ、辻やっぱこの人やめとこ?頭おかしいしおかしくなっちゃうって」
「もうなってるよそんなの」
「辻〜〜〜……」
「迅さんのことだっけ」
「あー、はい……」
「本気なわけないじゃん」
「ですよねえ」
「こっちから願い下げだわあんな男」
「……顔めっちゃ怖いですよ犬飼先輩」
「はっはっは」
「「あっはっはっはっは、はは………………」」
〈終〉

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