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焚火(R-18)

そうだ、全部燃やそう。放火魔のごとき妄想が俺の脳内を支配して、これは多分病気なのだろうと思った。精神安定剤代わりに乳酸菌飲料を飲んでぐっすり寝て誤魔化すか、いや、セックスがしたい。セックスがしたいと思い、スマホの画面をひたすら擦り続ける。こ...
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不思議

「どないせえゆうねん」水上先輩が頭を抱えている。面白い。これより面白い水上先輩のようすがあるだろうか。いや、無い。隠岐孝二は心の底から面白がっていたが、それを表に出さない程度には目上への礼儀を知っていた。「なんですかこれみよがしに」「隠岐く...
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何処でも行ける

美しさとは距離のことだ。遠く、遠く、どんなに手を伸ばしても届かない、向こうにある輝かしいもの。その先にまたある闇。果てのないもの。宇宙。二宮匡貴は瞑目する。夢の中できらきらと星が廻っている。きりきりと歯車が廻っている。それがやがて霞んで飛蚊...
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青春の終わり、生活

「水上せんぱーい」日曜日、草刈機で自宅周辺の雑草を刈っていると、懐かしい呼び方で名を呼ぶ声が聞こえた。隠岐孝二だった。赤子を抱いている隠岐の後ろには小さな娘と手を繋いだ奥さん、と思われる女性が立っている。「おう、久しぶりやな」「こんにちは。...
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「ひとりぼっちって、どういうことだかわかるか?」実力派エリート迅悠一は玉狛のお子様林藤陽太郎に語って聞かせる。ゴーグル付きのヘルメット、そのまるい輪郭を優しく撫でながら。「誰にも見られてないってことだ。誰にも知られていないってことだ。誰にも...
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残機(R-18)

※注意※この作品は性暴力を取り扱っています。読みながら気分が悪くなったときは無理をせず中断して下さい。登場人物一覧 迅悠一ボーダー玉狛支部所属実力派エリート。嵐山准と付き合っている。太刀川慶に※逆レイプされる。 太刀川慶二刀流の達人。忍田真...
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短歌

犬の才能(を棄てる)猫のよう月のような目に殺気宿って「李徴、さよなら」と犬狼になれない犬のおれを罵ってくれ、お願い、這いつくばって「おれたちはきっとたくさんいてそれのうちのひとり」「反吐が出ますね」枝分かれする未来にて待つあんたの言うこと聞...
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呪い(R-18)

「あ、迅さんだ」「え。ああ……ほんとですね。珍しい」「でも最近よく来てる方だよね」「そうですね。あ、また太刀川さんとじゃれてる」「楽しそうで何より」 ボーダー本部のロビーで茶を飲みながら、辻とそんな話をした。充分に距離をとって迅悠一のことを...
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過去ログ

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遠景と遊色

迅悠一は高いビルの屋上で人波を眺めている。遠景の中にいくつもの未来が見える。あまりにもたくさんあるのでそれは幻のように浮かんで消える。人間とおなじだ。目を合わせれば見えるし目を逸らせば見えない。見えなかったことになる。障害のある人間にもやさ...